未来へ続く経験
新しいボランティアやプロボノの受け入れにあたって、どんな役割を準備すればよいだろうか、忙しい中できちんと作業の進捗状況をチェックできるだろうか、と不安や悩みがつきものです。
私たちが「社会の器」としてボランティア・プロボノを受け入れていくときのポイントをご紹介します。
彼らにとってここでの活動がほんのひとときであったとしても、それは未来の変化につながる大切な経験になっていきます。
今回の取材で発見した…
ボランティア・プロボノのマネジメントのポイント
自主的に参加してもらうために
たとえばボランティアのためにお茶を出したとすると、その後も同じことを期待されてしまうかもしれません。お客様扱いせず、「お茶はここで淹れてね」とだけ教えて自分でやってもらう。分からないことがあったらまずは自分で考えてもらう。
また、ある程度経験を積んだボランティアにはリーダー役に回ってもらう。そうすることで自主性を育てるとともに、事務局の負担軽減にも繋がります。
意欲を高めるために
ボランティアにお願いする作業の中には、イベントの補助のような華やかなものだけではなく、資料の発送など地道な作業もあります。たとえば誰に・何のために送るのか説明してもらうと、同じ作業をするにも心持ちが変わってきます。
また、お昼ごはんを皆で食べるなど、さりげなくコミュニケーションの機会を設けることで、これまでの知識や経験を生かしたいと思っている社会人と、知識や経験を求めている学生の橋渡しをし、双方のニーズに応えることができます。
安心して参加してもらうために
今回取材した地球市民ACT かながわ/TPAKの場合、いつ来てもいいし、休んでもいい。いい意味での緩さが、仕事や家事や学業があっても続けやすい環境になっています。ただし、気持ちよく一緒に活動するためには「やってはいけないこと」は守ってもらうなど、最低限のルールは必要です。
「皆で話すと楽しいですよね。そこからいいアイディアが生まれればいいです」と話すのはTPAK 共同代表の島田さん。一緒に活動する仲間としてボランティアを温かく迎えることができれば、受け入れる側にも新しい発見があるかもしれません。
コラム 「ボランティアを受け入れ始めたきっかけ」
25 年前にタイの孤児院に偶然行ったら、そこには2,000 人の孤児がいて、ひどい状況でした。
その当時、私にも同じくらいの年頃の子どもがいました。帰国して幼稚園や小学校のママ友などに話して、洋服のリサイクルが何箱も集まったのですが、現地に持っていったところ「いらない」と言われました。「洋服ならいくらでも集まっているけど、かわいい服を着せたらさらわれちゃう」と。
支援というのは上から目線で哀れみでやってはいけないと、そのとき気づきました。相手のことを知らなきゃいけない、皆で集まって考えることが必要だと。
それで合議制で物事を考えていこうと決めました。ボランティアの受け入れはそういった考えの一つの表れなのです。
(地球市民ACT かながわ/TPAK 共同代表 近田真知子さん談)
蚯蚓のつぶやき(裏表紙より)
横浜市市民活動支援センター 薄井 智洋・吉原 明香
「心ひらいて、自分も社会も豊かにしたい」
「プロボノの活動を通して、自分が解放された」という言葉が印象に残っている。
この言葉は取材中にプロボノワーカーの方から自然と出たのだが、「解放された」とはどういう意味だろうか。
会社人として仕事をしていく中で、組織や立場を意識して行動するようになる。それはとても大切なことだとわかっている。しかし、往々にして、会社の判断が「社会にとってはどうなのか?」と思うこともある。自分の意志に反して話す・動く場面が続くと、いつのまにか「立場」を演じてしまうようになり、「本当の自分」がわからなくなっていく。
「解放された自分」とは、自分の意志でやりたいことを選択し、主体的に動き、社会の役に立っていることを実感できたときの感覚だ、とお話しいただけた。
他にも、「ビジネスやプライベートとは違う、第三の人脈」「会社の肩書きや信用が通用しない所で仕事をすることで、自身のスキルアップにつながった」「社会的な課題と向き合うことで、視野が広がった」等、参加して良かったという感想が多くあった。
このようないわゆる社外での体験は、「単なる現実逃避の場」に留まることにはならず、本当の意味での社会性の獲得、未来へ続く人間的な成長の機会となっている。
今回の取材の中で、心をひらき「自分も社会も豊かに」と一歩を踏み出した方々と多く出会わせていただいた。
真の豊かさとは、もっているものを渡し、またもっていないものを受けとるところから生まれる。
After 6 & Holiday、わかち合う豊かさへ。
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